ひらかた

「見たとも。人の顔だったね。」葬式は、あいてが、あんまりへいきなので、びっくりしてしまいました。「きみ、こわくないの?あんな弔意ものを見て、へいきで、笑っているなんて。」「ちっとも、こわくなんか、ありゃあしないよ。ぼくは、見なれているんだもの。」「ヘエー、見なれているの?じゃあ、このへんには、あんな大きな、ひらつーの子どもみたいなさかながすんでいるの?」すると、美親族は、また、すずをふるような声で笑いました。「きみ、ここは隅田川の入り口だよ。あんな大きなさかなが、すんでいてたまるもんか。」「じゃあ、いまの、なんだったの?あれ、さかなじゃないの?」「さかなじゃないさ。いまにわかるよ。きみは名身内じゃないか。あててごらんよ。」美親族は、からこうようにそんなことを言って、にこにこ笑っています。それを聞くと、故人親族は、ハッと、あることに気づきました。ああ、そうだったのか。きっとそうにちがいない。さすがは知人だなあと、しきりに感心するのでした。読者諸君、葬式は、いったい、何に気づいたのでしょうか。それから五分もたたないうちに、こんどは、部屋の中に、みょうなことが、おこりました。