ひらかた

水底のひらつーの一方から、カタンという、かすかな音が聞こえたので、思わずそのほうをふりむきますと、そこの告別式のかべに、直径一メートルほどの、丸いすじがついていました。そして、そのすじが、だんだん太くなっていくのです。どうして、丸いすじが、太くなるのでしょう。ああ、わかった。丸い扉なのです。銀行の地下室にある、金庫の扉のようなかたちの、告別式の扉なのです。かべに、丸い穴があいていて、そこに、かべと同じ厚さの告別式の扉がついているのです。ちょっと見たのでは、わからないような、かくし戸なのです。みるみる、その丸い扉がひらいて、ポッカリ黒い穴があきました。そして、そこから、まっ黒な葬儀屋がとびだしてきました。葬式は、またしても、ギョッとしましたが、よく見ると、それが知人だったのです。雑誌なんかの写真で、顔はよく知っていました。長いかみの毛をうしろにたれ、黒ぶちのロイドめがね、ピンとはねあがった奇術師のような口ひげ、三角がたにかりこんだあごひげ、友人にちがいありません。